年収1000万円の割合・手取り・生活レベルとは?気になる生活実態を徹底調査
国税庁の調査によると、日本人の給与所得者の平均年収は436万円です。つまり年収1000万円は平均の2倍以上の年収ということです。年収1000万円の人とは、一体どのような暮らしをしているのでしょうか。今回は年収1000万円を稼いでいる人の生活実態について徹底調査します。
目次
年収1000万円を稼ぐ人の割合は何パーセント?
国税庁「令和元年・民間給与実態統計調査」では、日本人の平均給与や年収が階級ごとに分けられており、どの年収の世帯が多いかなどを知ることができます。この調査では、給与所得者を調査の対象としています。したがってサラリーマンは対象ですが、個人事業主は含まれません。
年収1000万円を稼ぐ人の割合を知るために、調査結果をもとにしてまとめていきます。
日本全体のうち何パーセント?
同調査によると、年収が1000万円超1500万円未満の人の割合は、全体で3.5%でした。男女別にみると、男性は5.5%、女性は0.8%となっています。
なお、厚生労働省「令和元年・賃金構造基本統計調査・賃金の分布」によると、年収1000万円以上の人が最も多いのは、男性では50代~60代前半でした。一方、女性では50歳~54歳が多いという結果となっています。
年収1000万円の手取り額はいくら?
年収1000万円を稼いだとしても、この1000万円を全て使うことはできません。税金や国民年金など、必ず払わなければいけないお金があるからです。ここからは、一般的に高収入であるといわれる年収1000万円が、手取りにするといくらくらいなのかを解説していきます。
額面と手取りの違い
「年収1000万円」の中から、必ず差し引かれるお金を引いた残りの額が、自由に使えるお金です。これを手取りといいます。
一方、この場合の額面とは年収1000万円のことを指し、いろいろなお金を差し引かれる前の金額のことをいいます。
差し引かれるお金の内訳
額面から差し引かれるお金は、以下のようなものがあります。
- 税金(所得税、住民税)
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 介護保険料(40歳以上の場合)
- 社内独自のルールで決められたお金(親睦会費など)
年収1000万円の手取り額
概算で額面から手取りを知る目安としては、額面の8割相当分が手取りに近い金額です。つまり、年収1000万円の8割相当分ですので、手取りはおおよそ800万円前後になるとわかります。
手当や扶養家族の有無などで手取りは変わる
額面から差し引かれる税金のうち所得税は、配偶者や子どもなど扶養家族の有無によって大きく変わります。これを所得控除といい、所得から差し引くことで、税の対象となる所得を少なくすることができます。
したがって同じ年収1000万円でも、扶養家族が居るかどうかという点で、手取りの金額に差が出るということになります。
世帯別にみる、年収1000万円の生活水準とは?
年収1000万円とは、かなりの高収入であるというイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。確かに高収入であることには間違いありません。ここからは、年収1000万円の人がどのような暮らしをしているのか、生活水準について紐解いていきます。
月収はいくら?
年収1000万円の月収は、ボーナスを年間2ヶ月分とみなすと、約70万円です(ボーナスを年間140万円と仮定)。この月収70万円のうち、8割相当分程度がだいたいの手取り金額となりますので、月の手取りは約56万円ということです。
ただし、この金額はあくまで概算です。自身の家族構成やその他の所得控除などを考慮し、Web上のシミュレーションを利用してみると、より詳しい金額が提示されます。
家族世帯の生活水準
総務省の家計調査によると、年収1000万円を超えている二人以上世帯の月間消費支出は約47万円という結果です。消費支出とは、生活費全般や水道光熱費、住居費など全てを含めたものです。
月の手取りは約56万円ですので、月間の消費支出47万円を引くと、残りは9万円程度となります。年収1000万円は高収入ですが、公の機関の調査結果などを参考にすると、そこまで一般の生活とかけ離れて贅沢をしているという世帯ばかりではないと言えます。
社会保障に制限がかかる場合も
また、税金に関して詳しくは後述しますが、年収1000万円以上の高所得者になると、平均年収の世帯よりも受けられる税制面のメリットがかなり少なくなります。税制面だけでなく、子どもに関する手当の制限がある場合もあります。
このようなことから、特に義務教育期間中の子どもがいる場合の年収1000万円世帯は、大きく余裕のある暮らしをしている人ばかりではないと考えられます。
単身世帯では裕福な暮らしが可能
月の手取りが56万円とした場合、単身世帯であればかなり裕福な暮らしができるでしょう。なぜなら、二人以上世帯の月の消費支出は47万円ですが、単身世帯ではそれよりもかなり下回ると推測されるからです。
また、月の手取りのうち、特に住居費の差は大きいです。年収1000万円の単身世帯の人が都心に住む場合と、同様の条件で地方都市に住む場合では、家賃にかなりの差があります。さらに住居費だけでなく、物価の差は食費に直結します。
したがって、地方都市に住む年収1000万円の単身世帯であれば、かなり裕福な暮らしができると考えられます。
年収1000万円以上になったら税金に注意
年収1000万円以上になると、税制面の負担が増えたり、控除や手当の制限が発生したりします。これは年収1000万円以上の人を対象として、国がルール化し一律に決めていることです。年収1000万円を目指しているなら、自身の家庭ではどうなるのかを考える材料として知っておくと安心です。
所得税について
日本の課税の仕組みは「累進課税制度」です。簡単に言うと「たくさん稼いでいる人はそれだけ課税も増えますよ」ということです。つまり、年収1000万円ほどの高収入になると、かなり多くの税金を支払う必要があります。
所得税は、年収によって段階別に税率が違います。年収1000万円は、900万円以上1800万円以下に該当し、この場合の税率は33%となっています。
給与所得控除にも注意
給与所得控除という控除がありますが、これも累進課税制度と似た仕組みで、年収に応じて控除額が違います。年収1000万円は、給与所得控除のうち最も年収の高い部類になり(年収850万円超)、一律195万円の控除です。なお、令和2年から195万円になりましたが、それ以前は一律220万円でした。
給与所得控除が減るということは、その分課税所得が増えるということです。つまり、結果的に支払う税金は高くなります。
税金以外に注意するポイント
年収1000万円の人は、税金以外に関しても、本来ならお得に使える国の制度に制限がかかることがあります。主なものを以下で解説します。
児童手当の制限
児童手当とは、中学校卒業までの子ども1人あたりの月額として、段階的に一律の金額を受給できる制度です。
0歳から3歳までは15000円、3歳から小学校卒業までは10000円(第3子以降は15000円)、中学校卒業までは10000円です。
年収1000万円の場合、所得の制限に該当するため、この一律で決められた全額を受け取ることはできません。この場合は特例給付として月額一律5,000円のみ受給ということになります。
高校無償化の対象から外れる
高校無償化制度は、本来の名称を「高等学校等就学支援金制度」といいます。所定の要件を満たすことで高校の授業料が無料になる制度です。
この「所定の要件」のうちに所得の制限があり、目安となるのは世帯の年収が910万円以下という決まりです。したがって年収1000万円では該当せず、高校無償化のメリットを受けられないということになります。
節税効果のある制度を活用しよう
せっかく年収1000万円を達成しても、税制面の優遇が薄れることや、国が設けているお得な制度が使えないなどの問題が発生します。正しい知識をもって、少しでも節税対策を行うことは、自分や家族の資産を守ることにも繋がります。ここからは、節税効果のある制度をいくつか紹介します。どれも身近な制度ですので、ぜひ参考にしてください。
ふるさと納税
ふるさと納税制度を利用することで、所得税・住民税の還付や控除を受けられます。ふるさと納税は寄付金控除に該当しますので、一定の節税効果が見込まれます。また、好きな自治体にふるさと納税を行うことで、その地域の特産品やサービスの提供を受けることができます。
年収1000万円で単身世帯の場合、簡単なシミュレーションをしてみたところ、ふるさと納税の限度額は約17万円という結果でした。つまり、この金額相当程度が節税になると考えられます。
住宅ローン控除
住宅ローン控除は、自身が住む住宅を購入した場合、最大10年に渡って毎年控除される制度です。購入した物件の面積や住宅ローン契約期間など一定の要件を満たした場合に適用されます。
なお、現在は新型コロナウイルス感染拡大による特別措置で、最大13年まで拡大されています。長期的に継続される控除ですので、節税効果は高いと言えます。
iDeCo
iDeCoとは、個人型確定拠出年金という資産運用商品です。iDeCoの掛け金は全額が所得控除となります。iDeCoは老後資金に備えるための資産運用として普及していますが、運用期間中の運用利益も非課税となるなど、税制面においても優れた商品です。
まとめ
年収1000万円の生活水準を知ると、支払うべき税金が多く、国が用意している制度も所得制限で使えないなど、若干のデメリットを感じた方も多いでしょう。ただし、消費支出を減らすことや、最後に紹介した節税制度などを上手に活用することで、十分に対処は可能です。あまり不安にならず、年収1000万円を目指してみてはいかがでしょうか。